第117号:安定成長する会社は引き算思考、衰退する会社は足し算思考
飲食店のチェーン店を経営する経営者からの相談です。
「最近、業績が頭打ちになってきています。お客様アンケートを取って顧客満足向上のために様々な取り組みをしていますが思うように業績が上がりません」
「近々、新業態のオープンも控えていますが、現場責任者が既存店舗の運営指導に戸惑っている状態なのでマネージャークラスの教育をしてもらいたいのですが、研修メニューを組んでいただけないでしょうか」
経営者も幹部も同じ悩みを抱えていた!店舗拡大の落とし穴
この経営者は、時代の変化に合わせて新業態をプロデュースするセンスがあり、様々な店舗を成功させてきた実績を持っています。しかしながら、既存店の売上が年々下がっていることが問題で、既存店売上を上げていくための人材育成に悩んでいたのです。
そこで現場責任者にも話を聞いてみました。現場責任者は数店舗の店舗を統括して指導しており、店長教育に対する問題を感じているようでした。
要するに、社長も幹部も同じ悩みを抱えていたのです。しかし改善策がないままに店舗数が増えてしまい、問題が膨らむばかりだったのです。
既存店の売上が低下しているということは、顧客の心をつかむ「商品」や「サービス」の改善が的確に行われていないことに問題があるからです。ニーズが多様化している中で、お客様の要望に応える改善をするばかりでは、お店のコンセプトはどんどんぼやけていくだけです。そうすれば現場の業務も複雑化し、料理の提供スピードの遅れや単純ミスにつながりやすくなっていくのです。
お店は、業績が上がれば上がるほど運営をシンプルにして、コンセプトをより明確に打ち出すことで顧客からの継続的な支持を得ることができ、現場のサービスも安定するようになります。オープンした後はコンセプトを追求するための「食品」「サービス」の絞込みと磨き込みが大切なのです。
経営者の足し算思考が現場に移り、経営がますます複雑化!
経営は引き算することで、強みが磨かれお客様から継続的な支持も得られるようになります。しかしこの会社の場合はその問題を解決しないまま、既存店の売上低下を補うための新規出店を繰り返してきたことになるのです。
すなわち、足し算経営を繰り返してきたのです。
経営者の足し算思考が現場に移り、経営がますます複雑化し、お客様にとってはお店のコンセプトが伝わりにくくなり、現場スタッフにとっては運営が複雑で大変な状況になっていたのです。
人間は失うものに心を奪われ、いつしか足し算経営になってしまうのです。その思考が自社の存在意義を曖昧にし、そして現場の業務も複雑化させてしまいます。
一方、引き算経営とは自社の存在意義の追求であり、それが「商品」や「サービス」をとことん磨き上げることになります。その習慣が他社に真似のできない「商品」「サービス」の品質向上につながり顧客の心掴んで離さないものになるのです。
画像引用:photo AC